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白岳神社の裏には林があって、塗装されてない散歩道があった。まあ、林と言っても、マンションの立ち並ぶ住宅街の中なので、たいした大きさではなく、散歩道もせいぜい200mあるかないか程度である。
それでも、新しく明るい住宅街において、街灯のないその道は、その頃のわいにとって、かなりの恐怖スポットになっていた。
懐中電灯を持ったわい。
竹刀を持ったじっちゃん。
そして、手ぶらで後ろについてくるねーちゃん。
3人、散歩道の入り口で立ち止まり、暗がりに目を凝らした。
あの木の影から、宇宙人がシャカシャカシャカシャカって出てきたらどないしようって、ついつい考えてしまう。昨日テレビで見た、リトルグレイって宇宙人は、小柄ながらもシャカシャカシャカシャカ、ってすごい速さで移動してたもんな。
ゴクリと唾を飲む。
宇宙人遭遇率30%ぐらいはあるな。たぶん。
ドキドキして、じっちゃんの手を握った。
「で、どないすんの」
ねえちゃんが後ろから聞いてくる。
「ここを歩くんや」
「……それだけ」
「特訓やで、いつ、ネズミと宇宙人が出てくるかわからへん。それに身構えながら行くんや。ほな、行こう」
わいは、じっちゃんの手を引っ張って散歩道に入っていった。
「夏生、足元気をつけるんやで」
じっちゃんが、足元見ながら言った。
わいは、懐中電灯で足元を照らしながら慎重に進んだ。
しばらく、暗がりを見つめていたねーちゃんも、
「……ちょ、ちょっと待ち」
と、駆け足で追いついてきた。
「手繋ぐか」とじっちゃんが言っていたが、ねーちゃんはつながなかったようだ。
しばらく、静かにそのまま暗がりを進んだ。
落ち葉を踏む、足音がまわりの静寂に響く。
風が吹くと枝が揺れ、この葉がカサカサと音を出す。
どこか遠くで、犬の泣き声が聞こえた。
……やばい、宇宙人遭遇率50%や。
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