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「……本当な」
千晶も証拠だ。
頑張っても意味ない。
だって、観客は自分を観に来てなどいない。余計者としか思っていないのだから。
日曜夜八時。駅周辺のざわめきはきっと、終わる休日を惜しむ人の悪あがきだ。
悟は明日、何もない。
でも、自分がいなくても下北の日常と演劇の世界は続く。むしろ邪魔者が消える分より円滑に回る。
絶望的だ。
そんな風に憂いていると、ビルの階段から人の群れが降りてきた。
終演だ。
(……あ)
心臓が大きく脈打つ。
群れの中に佑真の姿があった。
そこで気づく。
彼は逃げて帰ったのではなく。
(一日に二回?)
必死だ。
悟に気づかず去る背中を見て、思った。
(よくやる。今のうち、なんて)
その先に何かある保証もないのに。
それをあいつも近々思い知るのだろうと、荒んだ心で思った。
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