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佑真の表情は冷静で、憐れんでいるようにも見えた。
また声が荒れる。
「思い上がんな。観客はあんたのことなんてどうでもいいんだよ。どんなに頑張っていいもの見せても、目当ての人ひとりがいないだけですぐ飽きる。そんなやつばかりだ。俺たちみたいな役者なんて誰も見ちゃいない!」
見ていないし、見ようとしない。演出家も、観客も、偶然会ったライバルも、下北に来た彼女も。
「あんたも芝居の腕は大したことないんじゃないか?」
毒は吐き出すと止まらない。
「だから観客のスマホ奪うくらいでしか名前売れないんだろ。騒ぎ起こすしか能がない大根役者がいい気になってんじゃ――」
そこで佑真の表情に初めて、わずかに傷が入った。
「……何だ」
「悔しいな。まだそのイメージ上書きできてないんですね、俺」
まっすぐこっちを見て、冷静に言う。
悟はどっと疲れて、その場にしゃがみ込んだ。
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