3幕1場:本多劇場客席

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「……!」  感動、というものを初めて知った気がした。  全部が体と心を揺さぶる。  物語の面白さ、それを目一杯引き出すセンスある演出技法、作品が今目の前で一度きりで展開している緊張感、それを限られた観客だけで共有している高揚……  俯瞰と横目で見た観客は皆残らず見入っている。全員が楽しんでいる。  そして俳優たちも皆、心から、本気で、好きで演じている。  伝わった。  押しつけられるわけでも、こっちから理解しに行くまでもなく、伝わった。  その様がかっこいいと思った。  震えが止まらない。  興奮で手が痺れ、痛いくらい心臓が存在と思いを主張する。  あんな風に、自分も観る人から楽しむ反応を引き出せたら。 (ああ……)  やっと、はっきり言葉になった。 (俺も、また舞台に立ちたい)  カーテンコールの拍手に囲まれた時、悟は自分の感情に気づいた。  名残惜しさ。  続けたい思い。  役者の仕事が好きだという気持ち。  佑真や矢野弘秋、他の俳優に嫉妬した理由がわかった。  どうしてお前ばかり順調に進められる。  少しは手加減してくれていいだろ。譲ってくれてもいいだろ。  
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