再演を願って

3幕1場：本多劇場客席

　袖に引いた出演者がまた舞台に戻る。
　拍手は止まない。
　その音に、観客の想いに、悟の感情も引き出されて溢れる。
（何だ……単純な話じゃないか……）
　嫉妬も怒りも逆恨みも醜い。
　でも、そんな負の感情が湧く理由なんて一つだ。
　嫉妬も怒りも、先を行くやつを時に憎いと思うのも、奥にあるのはもっと純粋な思いだ。
　この仕事が好きで、続けたい。それだけだ。
　ライバルの成長を止めたい、蹴落としてまでと思うわけじゃない。ファンを貶めたいわけでもない。そうじゃない。
　ただ願うのは。
　俺も同じ場所にいさせて。