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じっと睨んでいると、少年がふと会釈をして彼女から離れた。
駆け足で道路を突っ切ってくる。勢いで悟とぶつかりそうになったのを避けた。
「おい!」
「すみません!」
少年はまっすぐ悟を見て謝り、道を駆けた。
悟の背後、本多劇場の斜向かいに建つ「劇」小劇場に入る姿を捉える。
顔と声が人物と一致した。
彼のことは知っている。
名前は吉田佑真。自分と同じく舞台で活動する俳優で、去年デビューしたばかりの新人だ。
だが、デビュー作で彼が起こした事件のおかげで注目は急上昇。SNSのフォロワーはすでに三百超え、出演も続いているし演劇情報メディアに頻繫に名前を見る。そのメディアから見て取れる人柄も悪くはない。実力は……観た限り、ある。
近況報告の一つもできない自分とまるで違う、若さ、力と勢いのある役者と言える。
彼は悟より三歳も年下だ。
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