1幕3場:北沢2丁目のある喫茶店

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 颯爽と入口隣のテーブルを確保した同業を前に強烈な逃避思考が湧いた。  見られたくない。  俳優の仕事がなくバイトで生活を繋ぐ必死で情けない姿なんて。  でも彼のことは気になる。仕事はどうなのか。さっきのことを覚えているのか。  佑真は席に着くと鞄から一冊のメモ帳を出して開いた。  注文を受けに行くついでに見る。字がびっしりのページの頭には下北の別の劇場と演目が大きく書かれていた。鑑賞ノートらしい。  どう書けと教わっているのだろう。  彼は有名な俳優養成所の卒業生だ。淀みない活動の理由はそれだろうか。  ちくりと胸が痛んだ。 (俺だって……)  それくらいの余裕やサポートがあって、最初から選ばれるようになれてたら。  もなかったかもしれない。
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