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「・・・って、夢かい?!」
弓子は、目が覚めて辺りを見渡した。
手に持っていたスマホのメールには、先日に面接に行った会社での内定通知メールが来ていた。
「何だぁ・・・てっきりタンゴちゃんが帰ってきたのかと。」
弓子は、半ば記憶から消えそうになっていた黒猫のタンゴとの日々を夢の中で思い出してとても寂しくなった。
「タンゴちゃん・・・もう居ないんだよな・・・」
にゃーん。
「ん?部屋に猫の鳴き声?」
にゃーん。
「今度は近く・・・?」
弓子が顔をあげると目と鼻の先に懐かしい黒い身体とピンクの鼻、そして黄色い目がそこにあった。
「タンゴ?!タンゴちゃん!?」
にゃーん。
「タンゴちゃん!何処に行ってたの?!」
弓子は、帰ってきた愛猫の黒猫のタンゴを抱き締めて感慨にふけった。
「タンゴちゃん!私はあんたを一時も忘れてなかったよ!!」
・・・って、今さっきまで忘却の彼方だったけど・・・
くいっ!
黒猫のタンゴは、弓子の袖をくわえた。
「なあに?!タンゴちゃん!こっち来てだって?」
弓子は黒猫のタンゴに言われた通りに、家の玄関に来てみた。
そこには、人間に見付からないように隠れながらも悠々と去っていく2匹の野犬の姿があった。
「やっぱり、あの野犬達が私のタンゴちゃんを連れて来たんだ・・・
ありがとう!!」
野犬のエルとアクロは、黒猫のタンゴが冒険のつもりで出掛けた遠い街で迷子になり帰れなくなって困ってたところを助けられて、遥々弓子の家を探して此処に連れてきたのだ。
「タンゴちゃん。君は本当に不思議な猫だねぇ。」
黒猫のタンゴは、逢いたかったと言いたげに弓子に想いっきりゴロゴロと甘えて顔をすり寄せた。
「にゃーん。」
~件名:ねぇ、覚えてる?~
~fin~
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