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「どうして梨ヶ瀬さんが私の名前を知ってるんです? まさか私の事が気に入らないからってチェック入れてたんじゃ……」
やはり、あのお手洗いでの会話がまずかったのかもしれない。第一印象の悪い部下として目を付けられたとしか思えなかった。
だけど梨ヶ瀬さんは私の言葉にキョトンとした表情をした後、何かを堪えるように俯いて肩を震わせた。
「ふはっ、ちょっ……なんでその発想になるかな? さすが横井さんだね」
もしかして、この人笑ってる? 今の会話のどこにそんな笑いを堪えなきゃいけないような要素があったっていうのよ。
こっちは訳が分かんないというのに、梨ヶ瀬さんはまだその身体を震わせ笑いを押し殺している。
……何だかすっごく腹が立つんですけど、やっぱり私って梨ヶ瀬さんに揶揄われてる?
「普通はこういう時って違う事を期待したりするんじゃないの? 気に入らないからって、どこからそんな事を思い浮かべたのかな?」
「ですが私にはそんな心当たりしかありません。それに急に名前を呼ばれれば、あんな反応しか出来ないのは普通のことじゃないでしょうか?」
「うーん、少なくとも俺はこんな反応をされたのは初めてだね」
はいはいはい、こんな事は手慣れてらっしゃると言いたいんですね。わざわざ教えてくれなくても、梨ヶ瀬さんのその見た目だけで簡単に想像つきますから。
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