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「俺はああいう思い上がった男を見ると虫酸が走るんでね。まあ……麗奈が可哀想だと思ったのなら謝るけれど?」
「そんなつもりないくせに。それに……それって伊藤さん自身にも当てはまるんじゃないんですか?」
全く反省の色など見せないくせに、そう言ってくる伊藤さんをそのままにしておくほど私は優しくない。だって彼は私の親友の紗綾に同じようなことをしたのだから。
「……だから、だ。大事なものが何なのか全く分かってない、そのくせ自分は愛されて当然だと思ってるなんて。そんな奴には痛い思いでもさせて現実を見せてやるべきだろ?」
「本当に面倒くさい人ですね、伊藤さんは」
過去の自分と重なって見えた、だから余計に許せなかったのだろうか? 今でも紗綾への想いを捨てきれない彼の複雑な心境は、私には全部理解することは出来そうにない。
そんな私の言葉も、伊藤さんは笑って聞いているだけで……
「面倒なことばかりを呼び寄せる麗奈に言われたくはないな。ところで今回の事、梨ヶ瀬さんに話す気はあるんだろうな?」
「話さなきゃ……ダメですかね」
私的にはこれは自分の問題だし梨ヶ瀬さんに話すつもりはなかった、だけど伊藤さんにはそれも見抜かれていたようで。
彼の表情がいつもよりも少し険しくなる、そんな顔も出来るのかと思うほどには。
「怒られてもいいんなら俺はどうこう言うつもりはないけど? あー、でも梨ヶ瀬さんが本気で怒ったらきっと面倒だろうなあ」
「棒読みの台詞で私を脅すの止めてもらえません? 普通に心配だから相談しろって言えないんですか」
私の周りにはややこしい男ばかりが集まってくるのかもしれない。そう考えると、大きなため息がこぼれるのも仕方ないことだった。
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