必要ない、その心配

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「なにも難しいことはしてないな。ただ人事部に頼んで横井(よこい)さんの履歴書を見せてもらった、それだけだよ」  履歴書、確かに上司であるこの人ならそれくらい簡単に見れるのかもしれない。数年前に書いた履歴書の細かい内容まではさすがに私も覚えてないけど、もしかしたら演劇部の事も書いたのかもしれない。 「部下の得手不得手もきちんと知っておきたい、そう笑顔でお願いしたらすぐに見せてくれたよ? 案外チョロいよね」  ニコリと微笑むその顔に罪悪感は少しも感じられない、やはりそれが貴方の素なんでしょう! 私だけは絶対この笑顔と見た目に騙されたりしない!  それに…… 「私が気を付けた方がいいのはストーカーなのでしょうか、それとも私のプライベートにガンガン侵入しようとする上司でしょうか?」 「そう来たか、まあどちらにも気を付けた方がいいよね? 二人とも隙あらば君を食べる機会を窺ってるんだから」  絶対にどちらにも食べられたりなんかしませんし! っていうか、そんな気なんて欠片もないくせによく言うわよ。  心の中で梨ヶ瀬(なしがせ)さんに対して大きく舌を出しておいた。 「そんな事はどうだっていいんです、それより続き……さっさと話してくださいよ」  この人が考えたとしたら、こんな誰でも思い付くような事ばかりじゃないはずだもの。きっとまだいいアイデアを隠しているはず。
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