二回目の

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二回目の

「ねぇ、覚えてる?」 「え、何を?」  彼のその言葉に彼女は何かを察した顔をして前を向き直した。そんな彼女の意味深な様子を見て彼は少しムッとなり、狭いスポーツカーの車内に不穏な空気が漂い始めた。 「何だよ。何か言いたいことがあるなら言えよ」 「いえ、別に言いたいことはないのよ。ただアナタが覚えてないことがわかっただけよ」  彼女のその言葉に男はさらには気を悪くした。 「俺、何かしたか?君のことを知らずのうちに傷付けていたなら謝るし、正直に言ってくれ」 「アナタは何もしていないわ。だから気にしないでちゃんと運転してちょうだい」  そんなことを言われたものだから男は余計彼はイライラしてきていた。ハンドルを握る右手の人差し指でコンコンとハンドルを小突き始めていた。 「なら何でそんなことを言うんだ⁈君のその言い方では、まるで俺が何かをやらかしてしまっているぞ!」  彼女は冷めた表情になっていた。それは呆れの表情でもあり、彼女が何かを知っていることは明らかであった。 「本当に覚えてないんでしょ?じゃあ仕方ないわ」 「だから何をだよ⁈俺は何もやましい事もしてないし、疑われるような事もしてないよ!」  彼は完全に苛立っていた。本当に身に覚えがないし、彼女の言い方や態度が横柄(おうへい)なうえ、何か吹っ切れているその様子が気に入らなかったのだ。 「そんな事じゃないわ。もっと大事なことよ」 「わかるように言えよ!」 「色々と事情があるそうよ。だから私は何も言わなかったし、言えなかったのよ」 「はぁ⁈何のことだよ⁈」 「…。これで私達、別れね」 「何だよそれ⁈どう言う事だよ⁈」 「だって覚えてないんでしょ?じゃあ仕方ないわ。私はちゃんと覚えているもの。そして、ちゃんと準備もしてきたもの」 「意味わかんねぇ!」 「でしょうね。だってあなた覚えてないのだから。でも、これでアナタは二回目なのよ。この交差点で死ぬのは…」 “キキーッ!ガシャン!”終
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