君の生まれた日

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「碧斗にぃ、本当に家族大事にするよね」 「そりゃあ、大切だもん。2人目の子が生まれても変わらない」  帰り道を一緒に歩きながら話す。  碧斗にぃの奥さんのおなかの中には、2人目の赤ちゃんがいるそうだ。 「……いいなぁ」  気づけばそんな言葉が口をついていた。 「桃ちゃんの家だって、きっとそうだよ。桃ちゃんが生まれた時、みんな幸せそうだった。みんなが桃ちゃんに夢中で、あの嵐にだってお母さんもお父さんも、(ゆず)ちゃんだって気づいてなかったんだよ」 「嘘だよ、だって……」 「嘘じゃないよ。お母さんはきっと、幸せってことしか覚えてなくて、話ができなかったんじゃないかな」  碧斗にぃは黙り込む私の頭を優しく撫でると笑った。 「桃ちゃんは自分が思ってる以上に、周りから愛されてるよ。もっと自分を大事にしてね」  気づけばもう、自分の家の前にいた。  碧斗にぃは彼の実家である隣の家を見ると「あ、ここもう帰る家じゃないんだわ」とおどけて言って、手を振りながら遠ざかって行く。 「ありがとう! またね!」  私が手を振ると、碧斗にぃも「うん、またいつでも話聞くから」と笑ってくれた。 「……ただいま」 「あ、姉ちゃんおかえり!」 「お母さん、やっと母子手帳見つけたって」 「懐かしいなぁ……」 「思い出したの! あの日は午前中、すっごくいい天気だったのに、午後になって急に……」  家に入ると、弟、姉、父と母が、私の母子手帳を覗き込んでいた。  なんだか胸に暖かな灯りが灯ったような、不思議な気分になった。
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