君の生まれた日

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「ねぇ、覚えてる? 私が生まれた日のこと」 「そうねぇ……あれは朝だったかしら、あぁ、朝は柚希(ゆずき)ね。確か真夜中だった……あら? それは杏哉(きょうや)だったかしら」  自分の生まれた時のことを親に聞いてくる宿題が出た日、母に言われたのはそんなセリフだった。  3人兄弟の真ん中っ子である私は、兄弟の中でも影が薄い。  成績優秀で名門校に通う高校生の姉と、スポーツ万能で少年サッカーの全国選抜にも選ばれた小学生の弟。  そんな彼らに挟まれた何の取り柄もない私は、3人の中でも忘れられがちな存在だった。  きっと母にとって、私のことなんて忘れてしまうくらい、どうでもいい、3人の中で1番いらない子どもなのだろう。 「1番上の子は初めてだから印象に残るし、3人目は最近だから覚えてるんだけど……」  よく分からない言い訳をしながら「母子手帳どこやったかしら……」と押し入れや引き出しを探す母に「いいよ、テキトーに書くから」と玄関へ向かう。 「ちょっと桃菜(ももな)、どこ行くの?」 「散歩」  背中にかけられた母の声に、私は素っ気なく答えると家を出て近所の公園へ向かうことにした。 「……どうせ帰らなくたって、私のことなんか忘れるんでしょう?」  玄関のドアがしまった音が聞こえたあと、私は吐き捨てるように呟いて歩き出した。
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