繋がらないセカイ

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繋がらないセカイ

 『ヒナコ』  そう名前を伝えてきた女の子は、少し悲しそうな顔で笑っていた。  「カタカナでヒナコだよ、奏多。」  「えっ!なんで俺の名前__…」  「鏡越しに聞いてたから。たくさんの友達に囲まれながら鏡の前を通る奏多をずっと見てたの。」 この女の子が"鏡の中にいる"というのは自分でも考えていたことなのに、実際に言われると  「な、何を言ってるんだ…?」 と思ってしまうじゃないか。そう言った俺に向かってヒナコは指をさし、その指をそのまま鏡の方へ向けた。  「この向こう側には、もう一つ世界があるの。普通は繋がらない世界。」 もう一つの世界__?  「繋がらないのに繋がった。何か変なことが起きてるの。」  「変なこと?」  「そう。奏多の存在。」  「俺の存在?」 どういうことだ?俺が何か起こしたっていうのか?  「奏多はこっちじゃなくて、あっちにいなきゃなの。でも、鏡の気まぐれでこっちに来ちゃった。」  「…。」 間が空いた。  「…ははっ。え?俺がなに?鏡の中に入っちゃったわけ?いやいやいや、そんなのあり得るわけが…。」 頭が追いついていかない。そればかりか、めまいがしてきた。  ここが鏡の中ってことは、世界の全てでも反転してるのか?そう思って周りを見回す。何も反対になっていない。何が元の世界と違うんだ?  「い、意味がわからない…。俺は…帰るっ!」 そう言葉を残しながら昇降口へと走り、自分の家へ向かった。  「はぁ、はぁ…」 何が起きてるんだ?いや、もしかしたら何も起きてないのか?いや、でも鏡の中の声の女の子が目の前にいたのは事実だ。そもそも、声なんてものは元からしていなかったんじゃないか?  いくら頭を働かせても、なんの答えにも結びつかない。  「くっそ…。頭痛い。今日はもう休もう…」
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