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寝支度が済み、再び夜が訪れる。
信長は当たり前に褥に入り濃姫を呼びもしない。昨夜と同じ様に背を向け眠りに入ろうとしている。
濃姫は褥の横に座り、なんとも言えない顔でそれを見ている。
妻となれば、夫と契りを交わし、子を成すのが役目。子を成す為には再び不快に満ちた行為を受けなくてはならない…… 。このまま契りを交わす事無く、過ぎて行けば良いと思いもある。しかしそれで済む筈が無い。
信長との駆け引きがある。信長が真のうつけ者なら殺す。姫を産んだら子を殺す。自分には男児を産めと言った。産む為には契りを交わさなくて子は成せない。なのに褥に呼び寄せる事も無く、眠ろうとしているのに対し、どう対応したら良いものかと当惑していた。
しばらく悩み、このまま座っていても仕方ないと、褥に入る事にした。そっと信長の横に、触れぬ様に入る。やはり眠っているのか動く気配も声を掛けられる気配も無い。それにほっとする自分が居た。
信長に背を向け、目をつむる。今夜は何も無いだろうと思い眠りにつく。
妙に身体が重い。胸に違和感…の様な…もの…を感じる。眠りながら違和感を感じ、意識が目覚めてくる。
それが何か分かると、凄まじい勢いで胸元に入る手を振り払い、起き上がった。
信長が寝ながら濃姫の襟の合わせの中に手を入れていた。何をするっ、と言いたくも拒絶してはいけない物事。しかも当の信長は完全に眠っている。無意識でした行為だけに、責めるにも責める気になれなかったのと、なんとも言えない怒りがこみ上げてくる。
それよりも今日は三日目。今日こそあるのだろうと、目の前で眠る顔を見た。
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