胡蝶の夢

15/18
前へ
/19ページ
次へ
もはや身体を支えている事など出来ず、顔が付き、胸も付くのでないかと思う程に背はくの字になる。動きに合わせ、勢いよく抜かれ、仰向けに倒され、脚を持ち広げられ、素早くまた入れられる。 止まる事なく激しく突き上げられ、そこから見える信長の顔は、眉を寄せ、口から声の様な息を出している。 揺れる視界は微かだが、耳に入る音は妙にはっきりと聞こえる。胸を弄ばれながら、更に突き上げる動きが激しくなる。頭の中が真っ白になってくる。 苦しい…首が、苦しい…… 。信長が首に手をかけている。このまま殺す気なのか……腰の動きは増すばかり。思考が止まる。かすみ見える信長の顔。はがゆくも、色気のある顔だと…思う… 。 喜びを味わい得てしまった身体には、信長は魅力的な存在になってしまっているのを、認めざるを、得ない…… 「いくっ、ぞ、で…る…ゔっ」 信長の一声が、心地良く、聞こえた。 数ヶ月後、濃姫は子を成した。 順調に膨らんでゆく腹部。信長との仲は特に変わりは無かった。 言葉を交わしはするが、相変わらず信長は奇怪な服装で城外に行き、仲間を従わせ遊び回り、不躾な事をし、周囲の住民の非難を浴びていた。 その話は流石に濃姫の耳にも入っていたが、特に言う事は無かった。 家臣からしたら、妻を娶れば、子が出来れば…… 。今は男女どちらでも構わない、産まれ出れば……と、諦めに似た期待を持つだけだった。 月日は流れ、十月十日経ち、濃姫は産気づいた。 待ちに待った第一子。無事に産まれれば、自らの血を引く子の顔を見れば…… 周りの期待は増すばかり。 濃は産まれ来た我が子を見て愕然とする。いくら憎しみを持ち、歩み寄ろうと気が起きない相手の子であっても、我が子であるには変わりない。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加