胡蝶の夢

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濃姫が産んだ姫は隠密に他の者に託されていた。代わりに死んだ赤子を探し、濃が産んだ子とし、すり替えた。 濃姫の最初で最後の産み落とした子は、すくすくと育ち、成人し、嫁ぎ、子を持ち、末永く血は受け継がれていく。 「これが代々伝わっている、織田信長と奥方様、濃姫のお話し。……ご先祖様は敢えて書き残さなかったのかもしれないね。こうしてずっと口伝のみで伝わってきているの」 「信長は落ち込んだのかな……濃姫の事は歴史上、謎のままじゃない」 「どうなんだろうね。これは伝わっている話しで、真実は、当人にしか分からないから。この話をまた、もし…子どもができたらしてあげてね。貴女はその、濃姫が必死に残した子どもの末裔なのだから」 「私わね、濃姫は、信長の事、好きになっていたんだと思うの。濃姫の本当の気持ちが、子孫の誰かに伝わって、その誰かが信長に聞かせてあげれたら良いのに、なんて思った。信長の遺体、本当はどこにあるんだろうね」 今新たにこの世に、信長と濃姫の遺伝子を継ぐ子が産まれた。 望まれない子として、母親の温もりを感じる事無く離れ、育てられる子。育ての親の家庭で、我が子同然に血の繋がらない兄と共に育てられる子。 兄、己幸(みゆき)に智草と名付けられた、赤ん坊。
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