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「馬鹿な事を言う……… 。お前では無い。産まれた子を殺す」
「自分の血を引く子を、自らの手で殺すとは……魔王。第六天魔王に違いない」
信長は立ち上がり、濃姫の目の前で更に上から見下ろす。濃姫の抑えていた怒りはとうとう隠しきれなくなり、膝にある短刀を握る手が、ふるふると震えている。敵意をあからさまに表し、真っ向に睨み返す目。
それが余計に信長の心を揺さぶった。
腰紐に手を掛け解き、脱いだ着物を投げ捨てる。しゃがみ両膝に腕を置き、片手で濃姫の顎をすくった。
「第六天魔王か、最高の褒め言葉だな…… 。悔しければ男を孕め」
ぞわりとする、怖い程の色のある声と視線。
これだけ罵りながらも、祝言を挙げ、夫婦となったからにはする事はすると、言いたげな顔。
それが余計に濃姫には夫、信長に対しての憎しみを増長されるものにしかならなかった。
「最、低……」
「気の強い女は嫌いじゃない。その最低の夫とこれから契りを交わすのを、忘れてはいるまい。その為に来たのを」
濃姫は唇を噛み締め信長を睨んだまま短刀を横に置き、目をつぶった。
髪をかきあげられ、耳元で囁かれた。
「覚悟が良いな。俺が夫で良かったと、存分に味あわせてやる。三日…ある…… 。所詮、どんなに気を張ろうとも、お前は女だ」
今まで感じた事の無い恐怖と怒り。そして、耳の周りを舐められ、ぞぞぞと全身の中に走る怖気が立て続けに襲って来る。
耳をなぞる舌は、徐々に内側へと侵入してくる。
我慢も耐えきれず、肩をくすませ、身体を震わせ、顔を背けた。
「こんな事をされたのは初めてだろう…… 。屈辱か? それとも、感じてきているのか? …… 。ふんっ…俺は楽しい。……お前の反応を見るのが…… 。俺を甘く見るな」
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