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そう言うと、濃姫の打掛に手を掛け、肩から下ろし、手を後ろに回し、帯を解き、更に着物を脱がし、この日の為に用意された白い襦袢のみにした。
そこまですると、すっと離れ、褥に入り、片肘をつき横になり、頬を手に乗せた姿勢で、上に掛かる褥を持ち上げ、来いと一言言った。
濃姫は再び唇を食い縛り、言われたままに褥に入り、上を向き横たわった。しっかりと見開いた目は信長を見ようとはせず、閨の中の天井一点に向けられていた。
「……これから良い夢を見せてやる……」
「悪夢だわ」
濃姫の顔の横に腕をつき、じっと熱い視線を向けた顔が近づいて来る。嫌気が指す程の見下されたものと、つい、引き込まれてしまいそうな色気を帯びた目。互いの鼻が付く。
信長の口がこうを描くとすぐさま緩められ、軽く開かれた唇が濃姫のに触れた。
それまでの態度とは異なり、柔らかく、優しい。触れるか触れないか、信長は繰り返す。固く閉じられたままの濃姫の唇。信長は唇を少し開き同じ様に喰みだした。
軽く、優しく繰り返され、緩んでゆく唇。すると、今までと違う、互いに触れた時のぷるんとした感触が濃姫に伝わり始める。
しっかりと重ねられ、そのまま唇を喰まれてゆく………
不思議な感覚。今のさっきまで、憎いと思っていたにもかかわらず、頭の中がそれを忘れていってしまっている。
夫婦になれば、何をするのか。夫となる男と、どの様な事をして、子を成すのか、しっかりと教わってきている。
口吸い……互いの唇を重ね合わせる…行為……何の為に、何故その様な事をするのか… 。何一つする事の意味など分からなかった。
絵を見せられ、淡々と手順を話されたが、その様な前置きなどはせず、肝心な所だけをすれば良いのではないかと、疑問に思っていた。
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