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男ヤモメ…とは今時言わないが、44歳になる阿部卓史はバツイチ独身。いろいろ捨てながら、ユルい日常を過ごしている。ただ1人の女の子に振り回される以外は。
「おい樹里愛!まーたお前は、トイレ流せって!高校生なんだから女の子らしくだな…」
「あーっ、条例に引っかかるよ!言葉に気・を・つ・け・て❤️」
「埼玉県に『トイレ流さない奴を咎めたら爆死条例』とかあったか?」
「違くて!女らしくなんて言い方、今時アウトですのよ?お・と・う・さ・ま❤️」
「うっわあ驚異的に可愛くねえ!いいから早く学校行け!」
遠い昔は目に入れても可愛いかった気がしないでもない一人娘の樹里愛は、高校1年生。早々にギャルグループ入りし、不似合いなメイクと尖った態度が日々卓史をイラつかせる。
「ったく…あいつは何もしないで十分可愛いのに、あんな化粧とか…」
生意気盛りの娘は、父を「家の部品」程度に思っているに相違なかった。
「そうだパパ!クレーム!昨日のお弁当、ご飯と焼きそばってどんな話⁉︎糖質考えてよ」
「育ち盛りがダイエットだあ⁉︎ならこっちもクレーム。お前が当番の時の弁当な、ちっさすぎだって。自分もあれで足りるの?」
「足りない時はパン買うもんねー」
「糖質アドオンじゃねーか!ったく…今日は広島焼サンドウィッチだけど、残すと折檻だからな」
「また変なオリジナル糖質MAXメニュー…全部小麦粉じゃん!」
「ふふふ。これを『全粒粉』といって、健康にいい…」
「絶対違う!もーパパのバカ、略してパカ!」
「可愛くね…いやパカはちょっと可愛いけどその前なんつった⁉︎あっコラ逃げ足無駄に速え!」
毎朝喧嘩状態だが、卓史は最近の娘の生意気さを頼もしく感じている。樹里愛は母親がいなくなってから…いやその前から、母子関係のストレスでふさぎがちだったからだ。
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