巡るメッセージ、舞い降りる空。

3/14
前へ
/14ページ
次へ
 年末。2人に極めてスパイシーな事件が起きた。アプリで北海道新聞の朝刊を読んでいた卓史が、目を丸くして驚いている。 【須賀(すが)美都さん(39) 旭川市(あさひかわし)江丹別(えたんべつ) 喪主・父義雄さん ※葬儀終了】  お悔やみ欄。懐かしい地名と名前。慌てて彼女の実家に電話し、本人と確認した。 「俺さ、年明けたら北海道に顔出してくるわ。お前はどうする?」 「んんん…あたし行っていいのかな…」  間男とは結婚しなかったようだ。あるいは不倫自体が蒸発の口実だったのかもしれない。記事の旧姓がいろいろと物語っていた。  なら帰ってくればよかったのにと思うが、そのままこの世からも消えてしまうのが、気の強い美都らしさなのだろう。彼女が出戻ったときに義父から内緒の連絡があり、ひとまず安心はしていたのだが。  卓史は追っても無駄な美都の性格を思い、書類のやり取りだけで離婚が成立したのであった。  死因は聞いていない。どんな形にせよ、調べるのは美都への冒涜のような気がして、卓史は自重した。 (知ったところで取り消せるわけでもないしな)
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加