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クイズ対決再び
放課後
手塚兄弟が2年1組にやって来た。手塚さんは僕に言う。
「勝負を受けてくれてありがとう」
「こちらこそ、光栄です」
手塚さんは教壇まで進み話す。
「では、ルールを説明します。今から5問連続で化学の問題を出します」
「小学2年生に化学の問題?!」
人見はビックリして聞き返す。他のメンバーも動揺している。だけど、手塚さんは想定内とばかりにノーリアクションで返す。
「はい、あなた達なら5人の内、1人は解ける人がいると思います。4問目までは相談して構いません。ただ、5問目は相談無しで、1人しか答えることが出来ません。その人は親盛君が自分以外の誰かを指名してください」
「と言う事は、親盛君は答えもヒントも出せないって事?!」
中川さんは聞き返した。当然の疑問だろう。最も難しいであろう5問目を僕無しで答えなければならないのだから。だけど、手塚さんは、またもや想定内と冷静に答える。
「そういう事です。あなた達なら1人は答えられる人がいる筈です。それを親盛君に指名してもらいます。もちろん、問題を見たリアクションで決める事は出来ません。5問目のみ、他の4人は隣のクラスで待機してもらいます」
僕は「今回の参加費は?」と聞いた。
「今回は純粋に勝負をしに来ました。お金を賭けるのは無しです」
「分かりました。必ず勝ちます」
「では、早速始めます。第1問目」
手塚さんは問題の書かれた紙と鉛筆を机に置いた。
『
第1問
酸素の元素記号は?
』
何て単純な問題なんだ。僕は一応医者志望だから分かるけど、答えてはダメだ。みんなの化学の実力を知らなければならない。
「これは相談して良いんだよね?」
中川さんは念の為、手塚さんに尋ねる。
「4問目までは相談してもらって構いません」
「じゃあ、多分この答えは O《オー》よ」
中川さんが聞いた事があるという感じで答えると、人見が自信満々に答える。
「二酸化炭素が CO2 です。炭素が C で酸素は O です」
「うんうん、そこまで自信は無いけど O だと思う」
薬丸も賛同した。小園は分からないので邪魔をしないよう黙っている。皆、さすがだ。僕を必要としていないじゃないか。
「じゃあ、O《オー》で」
僕は紙の空白部分に大きく O を書いた。
「正解です。では、第2問」
手塚さんは次の問題が書かれた紙を机に置く。
『
第2問
水素の元素記号は?
』
薬丸が「これは、俺には分からない」と言うのを聞いて中川さんが「多分 H だと思う」と言った。人見は満を持して断言する。
「水が H2O なので水素は Hです」
人見は余計な雑学で自分は元素記号が得意だという事をアピールしている。今のところ、最終問題は人見を指名するのが本命だろう。
「じゃあ、H で」
僕は紙の空白部分に大きく H と書いた。
「正解です。では、第3問」
『
第3問
窒素の元素記号は?
』
中川さんが「えっ?! 自信無いわ」と言うのを聞いて、薬丸が「分からないよ」と言った。またも人見は自信満々に言う。
「空気中で1番多い気体の窒素は N です」
「じゃあ、N で」
僕は紙の空白部分に大きく N と書いた。
「正解です。では、第4問」
『
第4問
カリウムの元素記号は?
』
中川さん、薬丸、小園は人見を見る。
「多分 K です。そこまで自信はありませんが……」
僕が「では、K で」と即答するのを見て人見が焦って言う。
「ちょっと待ってください! 親盛さんは分かっているのですか?」
「ああ、僕は一応医者になるのが夢なんだ。だから元素記号は詳しい方だと思うよ」
「なるほど……」
人見はホッとしたような、残念なような、何とも言えない表情をした。僕は紙の空白部分に大きく K と書いた。
「正解です。では、最終問題です。親盛君以外の方は2年2組の教室へ移動してください」
弟聡を先頭に、全員がゆっくりと隣の教室へ移動する。手塚さんは全員が移動したのを確認すると、僕に問題の書かれた紙を見せた。
『
第5問
イットリウムの元素記号は?
』
何だって?!
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