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僕は声にこそ出さなかったけど、驚きを隠せない。聞いた事の無い単語の元素記号……。まあ、分かったところで僕に解答権は無いんだけど難しすぎる。小学生どころか理系の高校生でも答える事は出来ないだろう。すると、隣の教室から「えー?!」っという悲鳴にも似た声が聞こえた。恐らく人見の声だ。リアクションで決められないよう隣の教室へ連れていっているのに、声が漏れてしまっている。
普通に考えると、イットリウムだったら I《アイ》になりそうだけど、たしか、I はヨウ素だった気がする……。それなら It とかか? ただ、今までが全て1文字だった事を考えると Y が本命かな……。だけど、問題が難しすぎる……。答えがもし Y だとしても、それは僕が I をヨウ素だとした上での推理で、ここにたどり着けるメンバーは居ないだろう。とは言うものの、可能性が1番高い人見を指名するのが普通か? ……待てよ、こんな難しすぎる問題を手塚さんが出すか? 他にヒントがあるんじゃないのか? でも、問題が短すぎてヒントが入っているようにも見えない……。
僕は全ての問題の紙を順番に見る。
よくあるのは縦読みとかだな。問題の頭文字を順番に読んでいくと意味のある言葉になったり……ん? 頭文字? O、H、N、K…?
凄い! 考えられている! 親盛人見中川小園……と言う事は薬丸の Y か! 前回の僕達のように2段構えの引っ掛けの可能性もあるけど、これはそのまま Y が答えで良さそうだ。この推理を人見に求めるのか? いや、待てよ……もしかして……。
2年2組の教室
◆「手塚さん、これ難し過ぎませんか?」
人見は弟聡に詰め寄る。
「ちょっと、私語は厳禁だぞ」
「どうせ誰も分かりませんよ。イットリウムなんて誰も聞いた事無いですから」
「分からないだろ! 取り敢えず黙れよ!」
「……」
そこに兄秀が入ってきた。人見は、冴人に指名してアピールをしてしまった事を後悔していた。だが、聡を含めた全員が秀の言葉に度肝を抜かれる。
「指名は小園君、あなたです」
声は出さないものの、全員が驚いた後、小園の方を見る。
「えっ?! 僕?! 間違いじゃない?!」
「いいえ、親盛君は小園君を指名しました」
「そんな……僕、無理だよ」
小園は既に半べそ状態だ。
「まあ、取り敢えず行きましょう」
兄秀は嫌がる小園の手を引っ張り、2年1組の教室に連れていった。
「どういう事? 親盛君諦めたのかな?」
中川は皆に聞いた。
「まあ、私を指名したところで答えは分からないから、小園さんでもそんなに差はありません」
「でも、親盛君が意味の無い事をするとは思えないんだけど……」
「人見よりは良いと考えたのかな? そもそも空ってアルファベットも書けないから、俺を指名した方がマシだっ……たって……えっ?! ……まさか……」
薬丸は気付いてしまった。冴人の逆転の発想に……。
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