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「はい。では5分経ちましたので、ゲームを始めます。気を付けて欲しいのは、私語禁止だという事。発言者はマイナス1ポイントです。では……」
薬丸は椅子に座り、トランプを机に広げて交ぜる。そして、皆に1枚ずつ配った。皆は顔を見合わせながら、各々の前に配られたトランプをめくって見る。僕はカードを見て、少しビクッとしてしまった。なんと、2回連続でジョーカーだったのだ。だけど、何事も無かったように振る舞う。まあ、経験済みだし、むしろ楽だと気持ちを切り替える。
「それでは投票ステージを開始します」
僕は軽く周りを見ると、皆は教室の隅へ移動しようとしていたので、1番に机へ向かう。着席した後、後ろを振り向くと、全員が後ろを向いている。それを確認して、今回も再び『手塚』と記入して薬丸へ渡した。僕が後ろの黒板へ向かうと、それを感じ取って人見が机に向かう。ハッキリとは覚えてないけど、練習の時と同じ順番になりそうだ。
最後の人が書き終えたのを見て、薬丸が話す。
「では、結果を発表します。親盛2票手塚2票人見1票中川1票でした。排除者は空です」
「ええ~! また負けか~」
小園は落胆の声をあげた。
「それでは続けて朝礼ステージを行います。イジメっ子を指名したいと思う方は挙手お願いします」
少しの沈黙の後、薬丸が話す。
「誰もいませんでしたので、放課後ステージを行ないます」
練習での、手塚の指名失敗によるマイナス1ポイントを見ているせいか、誰もイジメっ子の指名をしないようだ。僕は軽く周りを見てから、机に向かう。さて、誰にしようか……。あんまり長く考えちゃうと、僕がイジメっ子だとバレちゃう可能性もあるので、人見で良いやと『人見』と記入し、薬丸へ渡した。本番だからか、小園は覗いてこないようだ。僕が後ろの黒板へ移動すると、それを感じ取って誰かが移動する。恐らく人見だろう。椅子に座る音が聞こえて、しばらくすると立ち上がる音が聞こえ、教室の隅に歩く足音が聞こえる。その音を感じ取って次の人が机に向かう足音が聞こえる。その繰り返しで、全員が作業を終えたからだろう、薬丸が話し出す。
「それでは結果を発表します」
その声を聞いて、僕は薬丸の方を向いた。皆も薬丸の方を向いて聞く。
「まず、排除されたのは人見です」
人見に視線が集まる。人見は残念そうな顔をせず、冷静に頷いている。その時、僕は薬丸が言った、まず、という言葉が気になった。薬丸は続けて話す。
「そして、イジメっ子側の勝利が決定しました」
「あれ? まだ2人残ってるよね?」
中川さんが不思議そうに言った。それを聞いて僕が話す。
「もしかして、手塚が子分になった?」
「そういう事。という事で、結果は親盛4ポイント手塚1ポイントその他の人は0ポイントです」
確かに、子分になれば確実に1ポイントを取りに行ける。もしかすると、手塚は皆が子分と書くと思ったのだろうか? それなら、僕が2ポイントで小園以外は1ポイントになる。それとも、僕を走らせても1ポイントの方が大事だと思ったのだろうか? まさか合格条件が優勝なんて厳しい訳もないし、確実に1ポイントを取りにいったのかも知れない。
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