夜を切る

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「うん」 「ほぉ」  男は夜切の顔を覗き込むように身を屈めた。  きりりとした眉に、切れ長の目をした男前である。  だが、夜切はその涼しそうな切れ長の瞳の奥に冷たいものがあるのを感じ取った。 「…阿呆面だな」 「はぁああ?!」  男の呟きに夜切が叫んだ。  あまりの声のでかさにもう一人の男は咄嗟に耳を塞いだ。  男はそんな夜切に何の反応も示さず家にいるお加代に向かって「邪魔したな」とだけ言うと背を向けてさっさと歩きだしてしまった。  “平凡顔”の男は夜切に頭をさげてから、先の男の後を追った。 「ふざけんなよ、おい!」  夜切が叫んだが、彼が振り向く事はなかった。 (感じ悪!!)  夜切は石を蹴飛ばした。  それでも苛々は収まらず「かあさん!!」と声を張り上げて家へと入って行った。
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