夜を切る

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 そんな千秋に吃驚した夜切は肩をビクッと震わせた。 「…夜切…」  大きく開いていた目を細めて千秋は夜切を呼んだ。 「酒、あんまり飲むなよ。飲み過ぎると体に毒だから」  夜切はそっと千秋に近づくと一升瓶を少し遠くへ動かした。 「…あぁ」  千秋は空のコップを眺めている。 「千秋を驚かそうと思って、黒田さんより一足先に銭湯から帰って来たんだ」  夜切はコップの中が空なのかを手にとって確かめた。 「おれが先で良かったな。黒田さんにこんな不甲斐ない姿をさらさずにすんで」  夜切は真顔だった。 (不甲斐ないって…)  千秋は渋い顔をした。
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