夜を切る

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「おっ、おう…」  あまりにもイメージからかけ離れた千秋の行動に夜切の声は裏返った。  千秋は掛け布団を持ち上げ、夜切が布団に入ってくるのを黙って待っている。  夜切は意を決して布団に入った。 「子守唄でも歌ってやろうか?」  機嫌の良い声で千秋が言った。 「………うん」  夜切は目を固く瞑った。酔った千秋の行動は普段の彼からは想像もつかない。 「……?」  待てど暮らせど歌声が聞こえて来ないので夜切はそっと目を開けて千秋を見た。  千秋は夜切に顔を向けたまま眠りに付いていた。  夜切は気の抜けたような口元から笑い声を漏らした。  眠っている千秋に夜切は身を寄せ、目を閉じた。
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