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《表題の件、
プロットがぜーんぜん進みません。
ちょっと一発、
"ドキドキのオフィスラブ"かましてきてくれない?》
そもそも、始まりはあの、
一件の依頼メールからだった。
「あ、やっほー」
「やっほー、じゃないのよ。
なんですか?あのメールは。」
「言葉の通りだよ?」
仁王立ちする私の前を、それこそ言葉通りスルスルと、大きな欠伸と共に軽やかに部屋から出てきて通り過ぎる女は、そのままキッチンカウンターに置いてあるコーヒーメーカーに向かう。
「あすみちゃんも飲む?」
「……サチ先生。話を聞いてください。」
「きーてるよー。あすみちゃん顔怖い。」
「元々こんな顔です。」
「うそお、もうちょっとマシだよ。」
…マシとは。
その感想にまた眉を寄せると、それに反して彼女はマグカップ片手にクスクスと笑う。
「サチ先生。何かあったの。」
「…どうして?」
「…"プロット進まない"なんて普段あんまり
私に伝えて来ないし。」
「心配させた?」
「……するでしょ、当たり前です。」
溜息と共に本音を漏らすと、やはり楽しそうに笑う彼女に脱力する。
「私の担当編集者さんは、心配性だなあ。」
「…私の担当作家様は、
常に愉快犯で困るんですけど。」
疲労感たっぷりな声色を自覚していると「おつかれじゃん」と言いながら出来立てのコーヒーを渡してくる。
いや、誰のせいだと思ってる。
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