▶︎(1通目)「"御曹司" 急募の件」

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_________________ ________ 《表題の件、  プロットがぜーんぜん進みません。      ちょっと一発、 "ドキドキのオフィスラブ"かましてきてくれない?》 そもそも、始まりはあの、 一件の依頼メールからだった。 「あ、やっほー」 「やっほー、じゃないのよ。 なんですか?あのメールは。」 「言葉の通りだよ?」 仁王立ちする私の前を、それこそ言葉通りスルスルと、大きな欠伸と共に軽やかに部屋から出てきて通り過ぎる女は、そのままキッチンカウンターに置いてあるコーヒーメーカーに向かう。 「あすみちゃんも飲む?」 「……サチ先生。話を聞いてください。」 「きーてるよー。あすみちゃん顔怖い。」 「元々こんな顔です。」 「うそお、もうちょっとマシだよ。」 …マシとは。 その感想にまた眉を寄せると、それに反して彼女はマグカップ片手にクスクスと笑う。 「サチ先生。何かあったの。」 「…どうして?」 「…"プロット進まない"なんて普段あんまり 私に伝えて来ないし。」 「心配させた?」 「……するでしょ、当たり前です。」 溜息と共に本音を漏らすと、やはり楽しそうに笑う彼女に脱力する。 「私の担当編集者さんは、心配性だなあ。」 「…私の担当作家様は、 常に愉快犯で困るんですけど。」 疲労感たっぷりな声色を自覚していると「おつかれじゃん」と言いながら出来立てのコーヒーを渡してくる。 いや、誰のせいだと思ってる。
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