▶︎(4通目)「嫉妬は急接近に必須な件」

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「…私、そういうセンス無いです。」 「個人的な意見で大丈夫です。 本格的に話も進んでないのに、あんまり△社の方に協力仰ぐのも良くないですしね。 ……いや、というか。」 「はい?」 「すいません、回りくどく言うのやめます。 俺が、榛世さんと話したいだけです。」 そう伝える彼は、また少し耳が赤い気がして、以前お蕎麦屋さんへ向かう時もそうだったと思い出す。 もっとハードルの高そうな、私がどう反応したら良いのか分からない言葉をこちらに何度も真っ直ぐぶつけてきたくせに、この人の照れる基準はよくわからない。 困ったように、まるで、全面的に降伏しているかのように。 眉を下げて力無く笑って、心の内をありのまま曝け出してくる南雲さんには、駆け引きとかそういうものが無いのだろうか。 鼓動なんかあっさりと早くなる一方で。 だけど脈を刻む度に、言い表し難い痛みがあった。 "あの南雲さんでさえ苦戦してたから、" "難攻不落"の彼女には、 この人はどんなアプローチをしていたのだろう。 必死に策を講じたりしていたのかな、なんて私には関係の無い筈のことばかりが頭を過ぎる。 「……榛世さん?」 「…やっぱり早急にギャラリーの者に色々リニューアルの件は確認してみます。 そうすれば、南雲さんも直接、うちの担当者とやりとり出来てラクですよね。」 「…俺がラクかどうかは、今はどうでも良いです。 それとも榛世さんにとって、重荷になってますか。」 「、」 彼の言う"重荷"は、あくまでギャラリーの仕事の話の範疇を出ていない筈だ。 それなのにどうして、こんなに寂しそうに聞こえるの。 何故だかその問いかけが、頭で繰り返す度にずしんと心にのしかかる。 黙り込んだ私をじっと見据える、澄み通った眼差しから今すぐ逃げてしまいたい。 "仕事は、お互い効率よくいきましょう" そんな風に軽く流してしまえれば良いのに。 言葉が上手く喉を出ていこうとしてくれなくて、焦りの中でタンブラーを持つ手に力が篭ってばかりだ。 それでも何か言わなければと口を開こうとした瞬間、ジャケットのポケットにおざなりに入れていたスマホが震えた。
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