夜が明けたら、君に

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 思い出した。  飲酒運転の車が、ぶつかってきたんだ。  あれから、どれだけの時間がたったのだろう。  気づいたらこの暗闇に閉じこめられた状態になっていて、今に至っている。  あの事故の衝撃から推測すれば、今の俺は病院のベッドで植物状態になっているんじゃないだろうか。  かすかな意識と意思が残っているだけで、外部には何も表示することができない状態で。    でも。  手も足も自分の意思ではっきりと動かすことができるし、目や口だって自由に開いたり閉じたりできる。  植物状態じゃないとすれば、死んでしまって今は死後の世界にいるんだと思った。  この世から身体という器が消え、魂だけが残された世界。    でも。  音は聞こえてくるし、触覚もある。 暗いだけで、視力もなんとなくあるような気がしている。 何よりも、重力を感じている。  であれば。  俺は何らかの理由で独房に閉じ込められているんだ。  身動きが取れないほど狭く、暗い監獄に。  でもな、おかしいだろ。  なんで俺が捕まってんだよ。  捕まるのは、飲酒運転していたあいつの方だろ。
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