夜が明けたら、君に

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 そのうち足を動かすのやめた。    ふあぁぁ。  何もやることがない。  四六時中身体も気も休めることなく言われるがまま働いていたときに比べれば、何もしなくていい、何も考えなくていい、というのは、当時では考えられないくらい良い環境なんだけれど。  平日は毎日深夜まで残業。  土曜も朝から上司との接待ゴルフで、夜はキャバクラ・スナック巡りのお付き合い。  夜が明けて気がついたら、ベッドの上で日曜日の夕日に包まれている。  いつ休むんだってんだ。  こんなブラック企業、ほかにどこにあるってんだ。  そんな過去と比較してみれば、今は一つのことを除いて天国のように感じられる。  追いたてられる仕事はない。  人に気を使う必要もない。  何時に寝ても、いつ起きてもいい。  暑くもなく、寒くもなく、ちょうど良い。  真っ暗なことと防音をもう少ししっかりしてほしいぐらいで、大きな不満はない。  不満といえば、部屋が狭いうえに紐のようなもので繋がれているのか、身動きしづらいことぐらいだ。
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