夜が明けたら、君に

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 大きな通りまで出たところで、彼女がふいに立ち止まった。  どうしたの、と聞こうとしたら、正面から抱きつかれた。  彼女の腰に腕を回すと、彼女も俺の背中に腕を回してきて、ぎゅっとくっつきあった。  首筋にかかる温かい吐息と、スーツ越しにでもわかるやわらかな胸のふくらみが、俺の深くに眠っているものを呼び覚ます。  ……我慢できないかも。  タクシーを止め、一緒に乗り込もうとすると、方向、ちがうからって首をぶんぶん振られた。 「やっぱり、今日はダメだよ」  そうか。そうだよな。  しょぼんとしていたら、チュッと頬にキスされて。  ぽかんとしてる俺に、次はちゃんと泊まる用意してくる、って耳元で囁かれて。  ばいばい、と手を振り、はにかんだ笑顔を見せて。  路上に俺をぽつんと残し、颯爽と走り去るタクシー。  もうしばらくしたら朝日が差し込み眠りに落ちる歓楽街に、肌寒い風が吹いた。  だけど俺の心は、今までにないほど熱く踊り跳ね回っていた。
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