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暗闇の中で
耳をすっぽり覆ってしまうくらいのヘッドホン。
外にいても聞こえてくるのは相対性理論の軽やかな音楽とやくしまるえつこの甘い声。
学校が休みの日は手持ち無沙汰な感じがして、とりあえず散歩する。平日の朝は怠いくせに、休日は妙にぱっちり目が覚めるのだから都合が良い。
梅雨が近付いてしっとりとした空気をかんじながら、繰り返されるフレーズが心地良く頭から体に響いていく。こんなにも反響するなら中身は空洞なのだろう。
実際、今の勉強も、他人との関わりも、将来のことも、全部透き通る風みたいに私の中に留まらない。
不安、と言えばまるで暗闇の中にいるような気持ちになる。自分で照らせる程の自信はない。目指す出口の光もない。導いてくれる手もない。
ただ吹き去った跡を見て、私の中の私が問いかけてくる。
「どうするの?」
曖昧な問いかけに答えなんて必要ない。私が求めているのは、与えられるもの。
スカートもスニーカーもストロベリー味もスマトラ警備隊も与えられて積み重なって私になった。断面を見れば空っぽなのに。
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