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五年前、ナツは俺たちと同じ小学六年生で、その妹のユキはまだ五歳だった。
ナツとユキとその父親の三人が生き残り、彼らの家と、家にいた母親が鏡面化に巻き込まれて消えた。
それはあの日に起きた数多い悲劇の一つにすぎなかったが、もともと父親と折り合いの悪かったナツは、中学校に入って荒れた。
俺もクラスの人気者というガラではなかったので、孤独な者どうし通じ合うところがあったのだろう。
友達だったかとか、友情があったかとか、そういうことはわからない。俺たちは二人でつるむようになって、それでますます学校で孤立した。
俺たちにはお互いをのぞけば、チカ以外に本音の顔を見せられる相手がいなかった。
チカがナツを好きになったのか、ナツがチカに惚れたのか。そういうことも俺にはわからない。
ただ、二人が付き合うようになったのは自然なことだったと思う。
幼馴染同士というのは結ばれないものだ。俺は二人の関係を祝福し、それまでどおりの付き合いを続けた。
そしてそういう関係のまま、俺たちは高校生になった。
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