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ナツにとってユキは妹だが、俺は他人にすぎない。ユキのクラスメートやその父兄に連絡して、ユキについて聞かせて欲しいと頼んでも、いい結果にはつながらなかった。
そうしたことはナツに任せて、俺は別なことをした。ウェブ上に共有された集合記憶、昔でいうインターネットにアクセスして、ユキのような事例がないか調べたのだ。
子供の失踪、行方不明、あるいは誘拐。
異常なほど何も出てこなかった。
まるで誰かが丹念に消去したかのようだ。
そもそもユキの件すらシェアされていないのだ。そんなことはありえないと思った。
俺たちと比べれば大人受けのいいチカは、学校関係者や教師たちに連絡をとって、ユキの失踪について相談を持ち掛けたようだが、これもめぼしい成果は上がらなかったようだ。
何の進展もないまま数日が過ぎ、そしてある朝俺は気が付くのだ。
ナツが、もういないということに。
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