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File2
チカをコール。視覚共有はなし。聴覚のみ共有。つまりは電話だ。
なかなか接続されない。嫌な予感に、掌に汗がにじむ。
「アキ? ごめん。ちょうど『承認ボタン』でちゃって。あわてちゃった」
「そうか、なら良かった」
「何かあった?」
俺の受け答えに何かを察したのだろう。チカは鋭い。
「ナツと最後に話したのはいつだ?」
無言。
「アキともつながらない?」
平静を装った声。
「今朝、いや、昨夜かな、いくつかファイルを送ってきた。それっきりだ」
「私のところには、ユキちゃんのq-phoneが配送されてきてる」
「クラックしろってことかな」
「そうだと思う。pinは、亡くなったお母さんの視覚イメージだって。それは画像ファイルで共有した」
チカはユキのq-phoneをアンロックしたときの記憶を送ってきた。
すぐには開かず、タグをつけて保存。
「今、会いに行っていいか?」
チカの感情が激しく波立つのが伝わる。
「今、家だな。すぐに行く」
「……待ってる」
俺はすぐに家を出て、自転車を飛ばした。
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