※※※それぞれの一週間3

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※※※それぞれの一週間3

ネクタイを絞め、鞄にジャケットをかけて部屋を出る。 キッチンでは鈴木さんが朝食をテーブルに並べていた。 家政婦(鈴木) 「春花さん、おはようございます。 朝食のご用意が出来ておりますので、お席へどうぞ。」 春花「おはようございます。ありがとう。」 ダイニングに行くと新聞に目を通しながら、 片手でコーヒーを飲んでいる悠がいた。 「悠さん、おはようございます。」 「おはよう。良く眠れた?」 「はい。」 「朝食を食べたら一緒に学校に行こうか。」 「え?」 「目的地は一緒でしょ。車で送って行くから。」 聖南学園は広大な敷地に付属の幼稚園から大学まで校舎が入っている。 高校と大学の校舎は隣合わせになっており、校門も同じなのだ。 「あ…えっと、友達と電車で通学するから駅で待ち合わせしてるんです。」 「……分かったよ。気を付けるんだよ。」 少し考えて、承諾した。 悠・春花「鈴木さん、行ってきます。」 家政婦(鈴木)「行ってらっしゃいませ。」 駅に着くと改札口で同じ制服の学生を見つけた。 小走りで駆け寄る。 「おはよう。待った?」 和希 「春花、おはよう。大丈夫。行こうか。」 田中和希(たなかかずき)は春花と同じクラスの2年A組。 中学部から一緒で悩みを打ち明ける事が出来る程の仲良しだ。 頭も良くて身長172の爽やかなイケメンだ。 両親は父(パイロット)母(スチュワーデス)。 家にも遊びに行く事もあって両親も春花の事は公認。 電車がホームに到着。 東京の満員電車はとにかく凄い。 学校までは2駅だが、このギュウギュウな車内は結構キツい。 和希 「危ないから、ほら、俺の手を繋いで。」 いつも、離れない様に手を繋いでくれる。 扉が開いて一気に人が車内へ流れ込む。 「わあ!」 いつもは、手を離さずに乗っていたのにこの日は凄い勢いで春花が押されて人混みに流されてしまった。 和希も慌てて春花を捕まえようと必死に手を伸ばしたがイカンセンここは東京。無理。 アナウンス 〈ドアが締まりまーす。ご注意下さい。〉 流された春花は入り口とは反対側の扉の硝子窓にいた。 痴漢と間違われない様に両手を硝子窓について揺れて倒れない様に両足を踏ん張る。 『和希と離れちゃった…。』 カタンコトン…。 電車に揺られていると、お尻に違和感を感じた。 断続的に何かが当たる。 誰かの鞄だろうか? すると、それはだんだんとお尻の割れ目を目指している。 『えっ…?』 今度は尾てい骨から掌で下に向かって中指と思わしき指をお尻の割れ目に這うようにゆっくり動かされる。 『やっ…これって…っ』 上下に何度かゆっくり動かされ。 すっと離れた。 『良かった…。』 そう、思った束の間。 今度はその手がゆっくり前に滑らせて来る。 股関の形をなぞるようにスラックスの上から撫で回され、チャックを捕まれてゆっくり下ろされて行く…。 『いや…だっ…だれか…助けて。』 半分ほど下ろされ開いたチャックの隙間から手が忍び込もうとした。 「おい。嫌がってるだろ。手、離せよ!」 ドスが利いているが、聞き慣れた声。 周りがざわざわと騒ぎだした。 駅に着き扉が開くと勢いよく人を掻き分けて男は逃げて行った…。 「大丈夫?恐かったね?」 思わず胸に抱き付いて顔を埋める。 「悠さん…。ありがとう。恐かった…。」 春花を守るように自分の胸の中に両腕でギュッときつく抱き締めた。 悠「あと一駅、頑張れる?」 コクンと頭だけ動かし意思を伝える。 駅に着いてホームへ降りる。 すると、和希が春花を見つけて腕を掴む。 和希 「春花~姿が見えなくなるから心配したよ 誰?このイケメン?」 悠「聖南学園大学、講師の月城だ。」 長身の堀の深い整った顔。 栗色の髪は風でさわやかに揺れている。 鋭く冷たい瞳が恐ろしいく、和希には見えた。 悠「学校まで送って行ってやる。行くぞ。」 校門まで来てそれぞれ別れて行った。
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