※※※春花の変化

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※※※春花の変化

〈おはよー。…〉 生徒達の挨拶が交わされている。 教室には、30名の男子生徒達。 担任の先生が教室に来るまでは、生徒達のコミュニケーションの時間だ。 進学校で私立のここは、幼稚舎からのエスカレーターで上がって来た生徒も多い。 言わば、お嬢様学園ならぬ御子息学園。 それが、聖南学園なのだ。 どの生徒も、いつもと変わらぬ親しい友人と他愛もない会話を楽しんでいる。 友人の変化に気付き始めた、だだ一人を除いてー。 春花「おはよう。和希!」 和希 「おう。おはよう! 春花~今日も可愛い~。」 ガバッと後ろから抱き付いて、サラサラの髪から香るシャンプーの匂いを楽しむ。 もうーっと怒りながら上目遣いで見てくる春花にドキッとした。 『えっ…なんかいつもの春花じゃ無い感じ、 なんか…色っぽい…と言うか…。』 和希がどぎまぎしていると、春花がふざけて、くるっと180度回転して爪先立ちで顔を上に向け目を閉じた…。 和希「えっ!?」 じーっと見つめて無意識に春花の唇へ近づいていく…。 何も反応がなくて不安になり、パッと目を開けると和希の顔が直ぐそこまで迫って来ていた。 春花「おい、!何考えてんだバカ!冗談だ」 咄嗟に顔面を掴んでギリギリの所で食い止めた! 冗談と言われた言葉に、本当は少し傷付いていたが、慌てて否定する。 和希 「あっ、当たり前だろっ! 冗談に乗っかっただけだっ。」 クラスではこんな「おふざけ恋愛ごっこ」は、そこかしこで繰り広げられていて、こんな2人を見ても回りは全くお構い無し。 チャイム 〈キーンコーンカーンコーン♪…〉 和希「あ。除夜の鐘。席に着こうぜ。」 一斉に生徒達が席に着く。 聖南学園のチャイムは他の学校とは変わっていて、お寺の鐘のような重厚な音がする。 なので生徒の間では「除夜の鐘」で、罷(まか)り通っている。 チャイムの音 〈キーン以下省略。〉 3次元目の終わりを知らせる除夜の鐘。 4次元目は体育の授業ー。 教科書を仕舞うと体操着を出し、生徒達が一斉に脱ぎ始める。 春花も例外無く、着替える。 その一部始終を和希は、見ている事を悟られないように盗み見る。 『肌白いよなー。男なのに柔らかくて、制服の上からでも気持ちいいんたよなー。 腰だって細いし、エロい… あっ、乳首見えた!ラッキー! ピンクで可愛い…。』 和希「あ!やべっ!」 春花「え?どうした?」 和希 「俺、ちょっとトイレっ。先に行ってて。」 前を隠すように手で押さえて小走りで教室を出て行った。 個室のトイレで半立ちになった分身をなんとか鎮めて体育館へ大急ぎで走って向かった。 保険体育の先生 「えー今日はバスケットボールをやります 16人づつで試合をして交代します。 後半は2人足りないから先生ともう一人、お前らの中から試合に出てもらう。 主席番号順でやるから1~16までコートに出てこい。 後は座って見学だ。」 ピーー! 笛の合図と共に試合が始まる。 赤の腕章と青の腕章に別れてゲームを開始。 ~ 軽快なドリブルで敵チームを掻い潜り、ゴール付近の味方チームにパスを出してシュート!が決まらず、ゴールに跳ね返ったボールを和希が捕らえ透かさずシュート! 2ポイント入る。 皆、それなりに楽しんで授業を受けていた。 春花も和希のシュートが嬉しかった! 『カッコいいな。 やっぱ、バスケ部だから上手い。』 皆と座って応援していたのに、急に目の前が暗くなった…。 バタッと倒れる生徒。 飛んで来たボールが生徒の顔面に直撃したのだ。 ピー!! 笛がならされ一同、その場に止まる。 先生が駆け寄り、肩を揺らすが反応が無い。 生徒 「保健員!先生と一緒に保健室に行くぞ!」 保健員「はい!」 ~ 〈ガラガラガラ…〉 先生 「嶋田先生、怪我人です。 体育の授業でバスケットボールが顔に当たりました。」 保健医(嶋田) 「そこのベッドに寝かせて下さい。 うーん。軽い脳震盪ですね。 暫く、様子を見るので寝かせておきましょう。」 先生「そうですか。分かりました。」 保健医(嶋田) 「念のため保護者には伝えておいて下さい この生徒の名前は?」 先生 「はい。伝えておきます。月城春花です。」 保健医(嶋田) 「保健員の君、目覚めるまで側に居てやってくれ。」 保健員「はい。」 一方…担任教師は保護者一覧表を見ていた。 『月城の両親って確か、再婚したばかりで海外に新婚旅行だったな。』 春花の名簿の欄には保護者4人の名前が記入してある。 ソコに見つけたのはー 「月城悠・職業 聖南学園大学 講師」 『これなら連絡が取れるな。』 プルルルル… 『はい。聖南学園大学の事務局です。』 「御忙しい所申し訳ありません。 聖南学園高等部、2年Aの担任・笹原です。」 『はい。お疲れ様です。』 「実はそちらにいらっしゃる月城悠先生の弟さんなんですが、体育の授業で怪我をしまして…連絡を取りたいのですが… 保護者の月城先生に、お電話をお取り次ぎ願えないでしょうか?」 『はい。そういう事でしたら…。 暫くお待ち下さい。』 チャンチャララン…♪(音楽) 『はい。月城です。』 「先生、御忙しい所申し訳ありません。 弟さんの春花君がですね、体育の授業でバスケットボールが、顔面に当たりまして… 倒れたんですよ。 それで、ご連絡を。と思いまして…。」 『それで、様態は…?』 「はい。直ぐに保健医の嶋田先生に診て頂きまして、軽い脳震盪だそうです。」 『そうですか。 分かりました。直ぐにそちらに伺います。』 「ありがとうございます。 では、一度職員室へ、お願い致します。」 『はい。分かりました。失礼します。』 一方…保健室~ 保健員「……。」 アナウンス 〈ピンーポンーパンーポンー嶋田先生、職員室までお願い致します。〉 保健医(嶋田) 「保健員、席を外すので月城君をお願いします。」 保護者に説明と案内をする為に職員室へ向かったー。 一人にされた保健員は春花の寝顔を見ていた。 『大した事無くて良かった~。 睫毛長いな…。女子みたいな顔。 嫌、春花の方が可愛い…。 唇…ピンクで…。』 チュッ… 生徒は起きないように、そっとキスをした。 『唇、柔らかい…。 もっとキスして…その先も…』 ガラガラガラ~ 保健医(嶋田)「先生、こちらです。」 仕切りのカーンが開けられ眠っている春花。 と、係の生徒ー 悠「田中君、だったかな。? もう、君は教室に戻りなさい。」 和希「はい。分かりました。」 『やっぱり、なんか苦手だ。 相変わらず、怖いし…。』 話し声で目覚める。 春花「うーん…あ、ゆ…先生。」 悠「脳震盪をおこしたらしいな。 気分はどうだ。大丈夫か?」 春花「はい。もう、平気です。」 保健医(嶋田) 「具合の悪い生徒は保護者と帰宅する学校の決まりなのですが、先生どうされますか?」 悠「そうですね。 私もまだ、授業が残っていますし… それが、終わってからでしたら。」 春花 「僕は大丈夫です。 それまで授業を受けます。」 保健医(嶋田) 「そうですか。分かりました。 一人で教室に戻れますか?」 春花「はい。ありがとうございました。」 悠の受け持つ授業が終わり、一緒に車で帰宅。 リビングに入ると、きつく抱き締められた。 「お前が倒れたって連絡が来た時は血の気が引いたぞ。 本当に大事に至らなくて良かった…。」 「うん。心配をかけてごめんなさい。」 春花が夜、眠りについた頃。 斗真が仕事から帰宅し、倒れて保健室に運ばれた事を報告した。 斗真「そんな事があったのか…。 色々と悪かったな。」 悠「父さん達には知らせ無くてもいいよね?」 斗真「ああ。 恭子さんの耳に入れたらすっ飛んで帰って来るだろうね。」 悠「そうだね。間違いないでしょ。」 ハハハハハハ… 久しぶりに兄弟の笑い声が家中に響いていた。
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