※※※春花の変化・3

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※※※春花の変化・3

なんとか、歩いて家まで帰って来た。 「ただいま…。」 シーン…と静まりかえった家の中。 春花の力ない声だけが弱々しく響く…。 それもそのはず、鈴木さんは午後4時30で帰宅をする。 義理兄、2人は早くても夜9時を過ぎないと帰宅をしない。 まだ、午後6時前。 いつもは少し寂しくて義理兄達の帰りを待ち遠しく待っているのだが、今日だけはそれが良かったと思える。 ダイニングテーブルに視線を移す。 鈴木さんが作ってくれた夕食が3人分、ラップを被せて用意してある…。 『食欲ない…でも…食べないと鈴木さんに悪いし、第一兄達が心配をして理由を聞いて来るだろう…。』 それだけは、絶対に避けたい。 今日はもう、何もする気力が起こらず、早くベッドに横になりたかった…。 自分の部屋へ戻って荷物を机の上に置き、制服のブレザーをハンガーにかけた。 『お風呂に入って、夕飯を食べたら… もう、寝よう…。』 シャワーの音 〈シャー……〉 頭から温かいシャワーを水力強めで浴びる。 顔を上げると鏡に映る自分の裸の姿がー。 鎖骨から胸、乳首の横そして腹に至るまで複数の赤い滲(にじ)んだ痣が浮かび上がる。 いやらしい痕を付けた体を見て、先程の出来事を思い出される。 強く吸われる度に痛くて、嫌で嫌で仕方なかった…。 でも、本当に嫌だったのは痛みの中で感じてしまった自分自身の「性」の部分。 いやらしい声を押さえきれず、気持ちいいと思ってしまった。 男の一番敏感な部分だとしても、あんな事をされて我慢出来ずに果ててしまったー。 自分が意図しない快楽を与えられているにもかかわらず、全てを否定出来なかった。 こんな、いやらしくて最低な自分を義理兄達が知ったら軽蔑されるに違いない…。 もう、優しく抱き締めてくれる事も無くなるだろう。 そんな事を考えていると、ポロポロと大粒の涙がこぼれてきた。 幸い、家の中には他に誰もいない。 声をあげて泣く…。 「うぇっ…ぐすん…ぅっ…。」 ~ 一方、悠は自分の受け持つ授業が全て終わり論文も書き終わった為、大学を後にした。 いつもよりも大分早い帰宅に食後のケーキを3人分お土産で購入した。 春花の笑顔でケーキを頬張る姿を想像して足取り軽く家の扉を開ける。 「ただいまー。」 「………。」 シーンと静かで春花の返事がない。 とりあえず、買ってきたケーキを冷蔵庫に仕舞うと、2階へ上がり春花の部屋をノックする。 「春花?帰ってる?」 「………。」 中を確認すると、机の上には鞄が置いてあり制服のブレザーもハンガーに掛けてある。 『帰ってはいるようだな。下に降りるか…』 ダイニングテーブルの夕食を見て、3人分の手を付けていない食事があった。 それを眺めていると…シャワーが流れる音がする。 「…?」 シャワーの水音に混じって微かに泣き声が聞こえて来たー。 『泣いてる…?』 ダイニングキッチンの部屋を出て廊下を進み奥のバスルームの扉の前に立つ。 「えっん…うぅ…くすん…ぇっ」 『泣いてる!? 何があったんだ!』 扉をそっと開け脱衣場まで来る。 磨りガラスのバスルームには人影が見える。 「春花…?いるの?」 シャワーを浴びていた春花が驚く。 まさか、こんなに早く帰宅をするなんて想定していない。 今の聞き方だと、泣いていたのを聞かれていないと思った。 シャワーを急いで止め、必死で平然を装って返事をする。 「あ、うん。…ぅっ…ぉ、お帰りなさい。」 『やっぱり泣いている。何かあったんだ!』 心配でバスルームの磨りガラスの戸を開ける。 ソコには、白い湯気の中に浮かび上がる裸の春花ー。 「それって…!?」 体には無数の見慣れた赤い痣が付いている。 良く見ると手首には絞められたであろう、痣が見えた! 「いや…見ないで…っ」 震えながら後退りをする…。 バスタブに足がついてこれ以上、下がれないと分かるとぺたんと床に崩れ落ち、腕で体を隠して震える。 それでも、近づいて来る悠に対してレイプをした相手かのように泣き叫んだ! 「いや…いや…お願いっ、来ないでぇ!!」 優しく春花を抱き締め、力を込める。 「大丈夫だから…春花…落ち着いて…。」 小刻みに震え泣きじゃくる。 付けられた無数のキスマークを見て怒りが沸々と込み上げる。 『こんな、力任せに痣を付けるヤツはSexを知らないガキだけだ! 痛かっただろうに…こんなに怯えて。 変な恐怖心を植えつけやがって!クソっ』 わんわん泣いて春花が落ち着くまで抱き締めて何も言わず、待ったー。 泣き止み、落ち着きを取り戻したのか悠の心配をして来た。 「あ、ありがとう… ごめんなさいっ…服、濡れちゃって。」 「服なんかより、春花の方が大事だ! 洗ってあげるから…そのまま座ってて。」 スポンジにボディソープを乗せクュクュと泡立てて優しく背中を擦る。 前を向かせると、直ぐに腕をクロスして隠した。 「大丈夫だから。腕を外して…ね?」 不安そうな表情を見せながらゆっくり腕を下ろすと、痛々しいキスマークが悠の目に晒される…。 眉をしかめて、再び痣を付けたヤツへの怒りが沸き起こる。 スポンジを首元に当てて、ゆっくり小さな円を描くように優しく洗う。 胸や腹、脚を洗って、流石に中心部は自分で洗うと言うのでスポンジを渡してやったー。 綺麗にシャワーで泡を流してタオルで体を拭いてやる。 新しい悠のシャツが置いてあるので取り敢えず裸の上から白のカッターシャツを着せた。 が、多分それが間違いだったとすぐに気付く。 春花には大きすぎる悠のシャツは、胸元を覗かせ、萌え袖の太もも絶対領域。 (下着がみえるか、見えないかのギリギリの丈を意味する。) シャツの色を白にしたせいで、うっすら透けて見えるピンクの乳首がテントを張らせ控え目に主張している。 『あ…。か、可愛いすぎるっ! 裸よりもエロくて、いやらしい…もぅっ。』 「はぁー。」 「?」 思わず、深いため息が出た。 悠の「男」が熱を持ち始めた事を春花は全く知らないー。
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