長男(斗真)side

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長男(斗真)side

今日は父の再婚家族と顔合わせの会食。 鼻歌が軽やかに遠くで聞こえる。 父はイギリス人と日本人のハーフ。 見た目は殆どイギリス人。 高い鼻に緑の瞳の甘いマスク。薄い栗色の髪はオールバックにセットしてグレーのスーツに袖を通しているところだ。 父親似の整った顔立ちに緑の瞳だが、斗真は黒髪だ。オールバックにセット。 紺色のストライプのスーツに袖を通しネクタイを整える。 弟の悠は身支度を既に整えてリビングの黒革張りのソファーに足を組んで寛いでいた。 身支度を整えた斗真がリビングに来ると父親も遅れて現れた。 父「少し早いけど出発しようか?」 俺達は父親の運転するべ◯ツに乗りホテルへと向かった。 都内の某プリンセスホテル。 受付で父が予約の確認を済ませると席に案内され再婚家族の到着を待つ。 父「5分早く着いたな。」 時計を見ながら嬉しそうに話す。 一緒に住む前に一度、顔合わせを兼ねて皆で食事をしようと言う事だ。 父(秀二・57歳)は医療機器メーカーの取締役で出張に行く事も多い。 斗真(32歳)はIT企業の重役で、今の時期は特に忙しいのだ。 悠(29歳)は聖南学園大学の数学講師。 とまぁ、3人ともそれぞれスケジュールが合わず先延ばしにしていたら同居する直前になったのだ。 父と雑談をしていた時、係の方に案内され恭子さんの姿がみえた。 父に促され席を立ち、軽く会釈をする。 恭子 「御待たせしてすみません。 春花、義理父さんの秀二さん、ご長男の斗真さん、次男の悠さんよ。」 『春花(はるか)』と呼ばれたその子は華奢にみえた。 恭子さんに面影は似ているが、大人の妖艶さは無い。 大きな瞳にツンと鼻筋が通った小鼻にピンクの柔らかそうな唇。 その、幼さが残る容姿を目にして瞬間に思ったのは『可憐な少女』という言葉が一番だ。 『可愛い妹が出来るんだな。』 メインの肉料理が運ばれて嬉しそうに食べる姿がなんとも可愛いらしい。 春花が目線を上げ、斗真と目が合う。 春花の緊張と警戒心を解くために斗真は優しく微笑む。 が…直ぐに目線を肉に落としてしまった。 『恥じらいを必死に隠そうとするのも可愛い…。』 父に話し掛けられ、春花から伝えられた言葉に時が止まる…。 春花「いえ、今も男子校ですよ。」 『え?男子校?』 理解するのに少しかかった。 目の前の「妹」が「弟」に変わったのだから。 俺と同じように固まっている両脇の2人を見ると性別を間違えていたのは自分だけでは無いと安堵した。 固まっている俺達を前に恭子さんが口元を上品に手で押さえながら笑いをこらえ、肩をヒクヒクと上下に揺らす。 すかさずフォローを入れる。 『いやいや…。俺達に見馴れているから、女の子に間違えたのね。なんて焼け石に水なんじゃ…。』 父は本気で春花が可愛いと必死に伝えている。悠も気持ちを伝えている事にイラつきを少し覚えた。 斗真も喰いぎみに気持ちを伝える。 春花が耳を真っ赤にして「宜しくお願いします。」なんて言うもんだから、悠とハモってしまった!。 悠の春花を見る瞳が、家族の会食を終える頃には「雄」片鱗を覗かせていた。 兄弟だから分かる…。 笑顔の裏に隠された秘かに沸き立つ情熱を。
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