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恭子、春花のお引っ越し
雲一つ無い晴天。お引っ越し日和。
いそいそと荷物を箱に積める。
母からは沢山の荷物を月城邸に運び入れるのは、ご迷惑だから要らない物は処分しましょう。と話され家具、家電やあまり着ていない服等はリサイクルに出した。
お陰で荷造りはスムーズだ。
1時間後、業者の方が荷物を積みにやって来た。 ピンポーン(インターホン)
業者「こんにちはー!『白猫たける』です」
母「どうぞ、お入り下さい。」
青色の繋ぎの作業着を着た引っ越し屋さんを母が招き入れ、慣れた手付きで荷物をトラックに積んで行く。
春花も邪魔にならないように手伝いをする。
母
「白猫さんは丁寧で仕事が早いって評判だから頼んで良かったわ~。」
業者
「いえ、有難うございます。
これでお荷物は全部でしょうか?」
母「はい。終わりです。」
業者
「ご処分なさりたい物とかはごさいませんか?」
母「いえ、大丈夫です。ありません。」
業者
「では、お届け先のご住所はこちらでお間違い有りませんか?
なければ、こちらにサインをお願いします。」
母が書類を確認し、サインをした。
業者
「では、お届け先でまた宜しくお願いします。」
母
「はい。こちらこそ、宜しくお願いします」
業者はトラックに乗り込むと出発した。
母は部屋を見て回り、最後の確認をしてブレーカーを全て落とした…。
扉に鍵を閉めて
「さぁ、行きましょうか。」と笑顔を向けた
春花は母の運転するスポーツカーの助手席でこれから、どんな生活が待っているのかを想像して緊張していた。
母
「今日、斗真さんと悠さんはお仕事で居ないらしいの。
秀二さんは私達の為に午後からお仕事を切り上げて、お家で家政婦さんと一緒に出迎えて下さるわ。
貴方の部屋も用意して早く一緒に住みたいっておっしゃていたのよ。
だから、何も心配する事は無いわ。」
春花の緊張をとかすように柔らかく話し掛ける。
春花
「うん。そうなんだ。
とても良い人だね。僕も早く打ち解けられるといいんだけど。」
母
「大丈夫よ。
お付き合いしている時も一番に貴方の事を気に掛けて下さっていたわ。
守りたいって。将来の夢があるなら手助け出来れば。って嬉しそうに話していたのよ。」
春花「うん。」
春花の不安の原因は義理父ではない。
年の離れた義理兄だ。
どんな会話をすればいいのか分からない。
しかも、義理父譲りの甘いマスク。
目が合うだけで言葉に詰まり恥じらいを感じているのを見られるのが嫌なのだ。
春花は心の中でため息をついた…。
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