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宿題が終わって、うーんっと伸びをする。「ぐぅ~」っとお腹が鳴った。
時計を見ると11時40分過ぎ。
『お腹すいた…。もうすぐお昼だし、冷蔵庫を見てみようかな。』
今日は日曜日。家政婦の鈴木さんはお休み。
部屋のドアを静かに閉めて1階のキッチンに向かった。
黒と白の大理石で統一された広いアイランドキッチン。
同じ空間には8人掛けのダイニングテーブル。スワロフスキーが埋め込まれており、光りに反射してキラキラとテーブル一面が輝く。
冷蔵庫を開けて中を確認する。
色んな食材が綺麗に取りやすく整理整頓されて見た目にも美しい。
「うーん、何を作ろ…。
オムライスにしようかな。後、サラダとスープ。」
せっかくなら兄達の分も用意しようと考えたのだ。
炊飯器のスイッチをセットし材料を取り出し並べ手際良く野菜を切っていく。
トントントントン…。
人参を切っている時だった。
「痛っっ!」
手元が狂い人差し指を少し切ってしまった。
包丁をまな板の上に置いて人差し指を眺める。プツーっと赤い球を作る。
その時ガチャ…
「軽快な包丁の音が聞こえたから来たんだけど何、作ってるの?」
春花はとっさに怪我をした指を後ろに隠した。
「オムライスを作ろうと思って…
悠さん達の分も。」
流しの側まで来ると、腕を後ろに回して何かを隠しているのが分かった。
悠「何を隠しているの?」
『どうしよう。』ぎこちない仕草で悠を見上げる。
「指を切っちゃって…でも全然大した事ないから。」
春花に近づき、片膝を付いて指を見せるよう
掌を差し出した。
オズオズと指を出す。
ほんの少し、切れている様だ。
悠「消毒しないとね。」
「あっ…!」
あろうことか、パクっと人差し指全部を口に咥えられた。
少しツンツンと舌先で突ついてみる。
「やっ…」
鼻にかかった甘い声が漏れる…。
自分でも、聞いた事の無い声にはずかしくなり目を反らす。
そんな可愛い声を出されて、いじわるをしてみたくなった。
反応を見ながら舌先の腹で、ゆっくり指の付け根まで動かして行く…。
「んんっ…だ…めぇっ」
さっきよりも少し、いやらしさを増した声に欲望のスイッチが入ろうとしていた。
腕を伸ばし細い腰に手を回そうとした時。
「何、してる。」
斗真がポーカーフェイスで2人に近付いてくる。
悠は見せ付けるように、ゆっくり指を口から離し立ち上がった。
悠
「春花が包丁で指を切ったから消毒してたんだけど?」
斗真
「はっ、そんなんで消毒になるか。
春花、見せてみろ。」
手首を掴んで引き寄せる。つい先程まで悠の口の中に入っていた指を水道で洗い流してやる。
救急箱の中からアルコール消毒液と絆創膏で処置をした。
春花「ありがとう。」
斗真「何を作ろとしてたんだ?」
春花「オムライス…とサラダとスープ。」
斗真「俺も手伝うよ。」
春花「うん! 嬉しい。」
初めて真っ直ぐ向けられた笑顔に愛しく思った。
悠「俺もなんか手伝う!」
斗真
「お前はいいよ、リビングでテレビでも見てて待ってろ。」
大人しく引き下がってリビングに行った。
料理が得意な2人のお陰であっというまにオムライスが完成。
テーブルに料理を並べた。
「頂きます。」
2人は思いもよらず、春花の手料理を食べれる事になって嬉しかった。
義理兄達と楽しく食事が出来たので初めのようなガチガチの緊張は無くなっていた。
後片付けは3人で仲良く?分担して終わらせた。
斗真「午後からはどうするんだ?」
春花
「宿題は終わったから、月曜の予習復習をやろうかと思ってるんだけど。」
斗真「俺が教えてやるよ。」
春花
「いや…いいです。なんか悪いし。
それに、お仕事の邪魔なんじゃぁ…。」
すかさず、悠が割って入る。
悠「俺が教えるよ。だって先・生だしね?」
斗真
「お前、まだ論文出来上がって無いだろ。
この間、締め切り近いって独り言でぼやいていたのを聞いてたぞ。」
悠「地獄耳」
斗真「お前の独り言がデカイだけだ。」
春花に先に部屋へ戻って待ってるように。と促した。
春花は義理兄達を背にして2階へ上がった。
パタン…ドア閉まる音が小さく聞こえた。
悠「春花の部屋で2人、何をするき?
手を出したら分かるよ、隣だからね。」
斗真
「お前に関係無いだろ。
何、考えてんだよ。勉強を教えるだけだろ」
悠「フッ…どうだか。」
春花の奪い合いは既に始まっていた…。
実の兄弟で好きな相手を分かち合うなんて気持ち悪くて考えられない。
兄弟でなくても他の誰かと共有なんてごめんだ。
斗真「論文頑張れよ。」
片方の口角を上げ笑っているが、瞳は全く笑っていなかった。
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