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合言葉
「ねぇ、覚えてる?」
1年4ヶ月ぶりに会った君は
ひとしきり近況を話した後
そう言った。
なんだよ唐突に、そう思いながら
彼女の質問の答えを探した。
僕と彼女が出会ったのは専門学校の時。
居酒屋のバイト先で知り合った。
彼女の夢は和食専門の自分のお店を持つ
こと。夢の実現のため調理師専門学校に
通っていた。
僕の夢はまだ見つからない。
大学受験に失敗し
今はITの時代だからと言う理由で
コンピュータの専門学校を選んだ。
今のバイト先を決めたのも
賄いが出そうとか
割引ありそうとか
そんなたわいもない理由だ。
彼女が今のバイト先に決めたのは
大手のチェーン店で
接客とか流通とか調理以外でも
将来役に立つ事も学びたい!!
そう言っていた。
彼女とはバイトのシフトがよく重なり
どちらともなく話すようになった。
それまで女の子と話すのは苦手だったが
彼女とは何故か普通に話をすることが
できた。
心が落ち着いて飾らない自分でいられた。
とても居心地がいい!
それが僕の第一印象である。
そうやって彼女と過ごした時間を
振り返っていると、彼女の質問に
対する答えが頭に浮かんだ。
渡良瀬橋の方向からさす夕陽が
彼女にスポットライトを当てた。
僕は彼女の横顔を見つめながら
自信を持って答えた。
「勿忘草の花言葉…」
僕の答えを聞いた彼女は
静かに笑みを浮かべた。
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