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0.『始まり』、というより少し先の回想後
「あの、すみません、私のこと覚えてますか?」
「えっーと、僕に言ってますかね.......?」
「はい」
学校の廊下で、目の前の女の子に不意に話しかけられた。
特に身に覚えのない人だったため、はじめ、自分に話しかけているとは思わず、反応が遅れる。
少し考える時間を置いたが結局分からないまま。
「すみません.......覚えがないです」
短く知らないことを伝えた。
それと、もし知り合いだったとしたなら失礼に当たるだろうと思い、気持ち程度に謝罪もつけた。
「そうですよね、流石に.......呼び止めてすみませんでした」
目の前の女の子はいっきに暗い顔になった、可哀想なことをしてしまった。
そんな気持ちになりはしたが、それ以上は何も出てこない。
下を向いた状態で、女の子は僕の横を通り過ぎていき、それを追うように僕は後ろ姿を見る。
先程までポニーテール風? に結んでいた髪を、手で撫でるように解いていた。
その髪をおろした姿がやけに見に覚えがあることに気づく。
気づいた瞬間、女の子に歩み寄りつつ声が出る。
「もしかして、君は──?」
僕は女の子の名前を言った。
あっている確証はなかった、昔よりも全体的にやせ細っていたし、背が伸びっていたから。
でももしかしたらと思って、声を出した。
それを聞いた女の子は振り向いて、嬉しいとも悲しいともとれるような顔で頷き、
「そうだよね.......うん、そうだよね。」
何を言えばいいだろう。
少し迷ったが、思ったことを口にすることにした。
「久しぶり。」
女の子もそれに続いて。
「久しぶり、気づいてくれてありがとう.......!」
彼女の声を聞いて、明るい顔を見て、曖昧だった気持ちは確信に変わった。それから、
「いつ、戻ってきたの?」
そう言おうと思った時、彼女は僕に手を振りながら、背を向けていた。
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