22人が本棚に入れています
本棚に追加
虚無の独奏
ギターを弾いている。
ひとつひとつ手元を見ながらコードを押さえる。
おぼつかない手先は時々、淀んだ音を響かせる。
この音を聴いた霧の中の悪魔は、集まるだろう。
そして、私は悪魔に殺される。
それでいい。
もう終わりにしよう。
疲れたんだ。
私は、荒れ果てたレストランの中にいる。
フローリングの床は割れ、足の折れた椅子はいくつも倒れている。
床に散乱した食器、割れた破片は鋭利にきらきらと瞬いている。
窓から白い朝日がおぼろげに、薄暗い店内を照らす。
窓枠はガムテープで密閉され、窓には無数の血しぶきが付いている。
窓の外は、深い深い濃霧が広がり、白い光景以外に何が起きているのかわからない。
店内には壁に寄りかかり目を開けない者。
床に倒れている息をしていない者。
血を吐いている死んだ者。
妻も娘もいたが、私だけが残ってしまった。
私は、店内の中央にある欠けた噴水のモニュメントに腰をかけて、ギターを弾いている。
噴水の水は途絶えている。
受け皿は割れ、溜まっていた水が床を濡らしている。
最初のコメントを投稿しよう!