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昼食時、ついに一人が口に出した。
「もうやだ。あの人、一柳さん帰ってきて欲しい。カムバーーーック!!」
「そうそう。私たちだって忙しい。なのに、『それ、そんなに時間かかる? 俺なら……』ってジーッと手伝いもしないで見てるのよ? なんか自分はいかにすごいかって言いたいだけ」
「わかる。『そんな根詰めないで休憩にしない? お茶でも買ってきて』だって。今忙しいっつの。お前が行け。暇なのお前だけだばかやろう。この前なんて忙しいのに封切るためだけに呼んだのよ?」
「ていうかね。公認会計士さんあんなタイプ多いよ。前の会社でもそうだった。偉そうでプライドの塊。で、仕事しないの。口ばっかり」
と、誰かから偏見まで出てきた。
「まぁ、頭はいいんでしょうね。勉強だけできる頭の良さ」
「そうそう。いかに一柳さんがバランス良かったか。あぁ、一柳さん……」
「まだあと数回くるからガツンと言ってもらいましょう!」
千幸は皆が一致団結するのを苦笑いでやり過ごしていた。それから、自分が憧れ、感情が昂ったのは功至の公認会計士という肩書だけではなかったのだと今更ながらに知ることになった。
――後日、出勤した功至は部署の人たちに神のように崇められていて、功至の戸惑う姿がおかしかった。
福留は功至から
「はい、ハサミ」
と、封書を切るためのハサミを渡されていた。部署の皆には
「若いやつだから、今からちゃんと教育しないととんでもない上司になるぞ」と助言し、この日は皆、功至を後ろ盾に遠慮なく福留に意見していた。
「一柳さん無き後は、小宮山さんが黙ってないんですからね」と千幸を使って脅していて、功至も千幸も福留に苦笑いを向けた。
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