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職場の状況は少しづつ改善してきた。功至ほどではないが、福留も根は悪い人ではないらしく、高慢な態度は減って行った。
功至が言うには若いから馬鹿にされないように張り切ったのが裏目に出たのではという事だった。それと、福留の元上司がそうだったから真似たのだろうと。
「誰であろうと言いたいことは言わなきゃですね」
「ほんとそう」
千幸は職場の空気が少し良くなってホッとしたが、かつて自分もそうであったと反省した。話してみないと何も変わらないのだ。
誰であろうと。
何だろうか、何かが……。千幸はどこで間違ったのだろうと思い返した。どこで。功至は人の話を聞かない人ではない。緊張で話せなくなっても、妙な事を口走っても、寄り添って千幸の話を聞こうとしてくれた。話さなかったのは……自分だ。
話したい。話さなければならない。まだ、功至に言っていないことがある。
千幸はそれに気が付いて、胸の前で両手をぎゅっと握った。
時間を作ってもらおう。無理でも家まで行けばいい。就業時間後、千幸は功至にメッセージを一つ送った。
『今度の土曜日、時間をつくってください。何時でもかまいません』
功至からはすぐに返事が来た。
『わかりました』
一生分の恥をかいたっていい。すでに心臓が痛いくらい、千幸はありったけの勇気を集めた。
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