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「私ですか?」
麻里は思わず訊き返していた。
「ああ、急で申し訳ないが、君で決定だ。即座に出国の準備をしてほしい。
こちらでも異動の時期になるから、同じようなものと考えてくれていい」
(さすがに違いすぎでしょう)
心の中で思っただけで、麻里は表情には出さなかった。
海外赴任を望んで、ずっと希望を出していた。でも、まさか五年目で叶うとは思わなかったから、喜ぶ気持ちよりもとまどいが彼女には強かった。
しかも、この抜擢には事情がある。
赴任をするはずの社員が急病で入院したのだ。病気はそれほど重いものではないけれど、さすがに海外勤務は無理になる。
そこで、数人の候補者がピックアップされて、その中から麻里が選ばれたわけだ。
ずっと希望を出していたことと、英語が堪能で候補者の中で唯一の独身。急な赴任にも対応できるというのが決め手のようだった。
そして、さらには唯一の女性候補。キャリア形成に男女は関係ないというアピールにもなる。
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