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そしてまた朝になった。病室の無機質な色を不思議に思いながら起き上がる。僕の隣には検温の為にやってきた看護師さんが居た。挨拶を交わして、僕は問う。 「?」 体温計を脇に挟みながら看護師さんが、柔らかく答える。 「(さかき)圭太くん。年は16歳で高校2年生だった。普段は、テーブルに置いてある手帳を見て出来事を辿っているのよ」 「これ、僕の何ですか?」 「そう、榊くんのよ」 ピピっと音がして体温計が離れていく。体温をカルテに書き終わった看護師さんが、僕に手帳を渡してくれた。 「ここに、昨日の榊くんが書いてくれた事がある筈。記憶は思い出せないだろうけれど、無理しないで」 僕の肩を優しくポンと叩いて、カートを押しながらドアに行こうとした。僕は咄嗟に聞いてしまった。 「あの、僕って何でこうなったんでしょうか」 クルリと振り向いた看護師さんは、切なそうに笑うばかりで返答は無かった。
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